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素人が語る JAZZ カルテットのお話

今回は、好きな音楽のお話から。

高校生で JAZZ にはまり、人生で最初に行ったコンサートは、アート・ペッパー。
1980年、島根県民会館で、18歳の時でした。

開場を待って並んでいるとき、いかにも老紳士という感じで、内ポケットからパイプでも出てくるんじゃないかと期待させるようなおじさんや、ちょっと寝かせた洋酒のような淑女の皆さんの中で、高校の学生服を着て立っていると、けっこうジロジロと見られ、というより、少し周囲に距離をとられ(ソーシャルディスタンス・・・な訳ない)、とても場違いな感じでした。

演奏は、アルトサックスのアート・ペッパーを中心に、ピアノ、ベース、ドラムスというカルテットだったと思います。とてもシンプルな構成で、とにかくサックスの演奏がダイレクトに心まで伝わってきました。

多分、音楽をやっている人にとっては当たり前のことなんだと思いますが、たった4種類の楽器で、こんなにも深い感動の世界が創れることにとても驚きました。

OECD(経済協力開発機構)が世界186カ国を対象に行った調査によると、「親や先生を尊敬していますか?」という回答に対して、「尊敬している」と答えた生徒の割合は、

1位韓国89.5%
2位中国86.9%
世界平均70.7%
最下位(186位)日本25.2%

この数字が50%を切ると、その国は亡ぶと言われているそうです。その真偽は定かではありませんが、確かに、親や先生が尊敬できないなら、教育は機能しない。教育が機能しなければ国が荒廃する。これは間違いありません。

ここ数百年、日本が高い国力を維持してこられたのは、中世以降、世界屈指の教育を持っていたからだということは、国内外の衆目一致をみる見解だと思います。しかし今、どうもそれが瀕死の危機。


OECDのもう一つの調査、(TALIA 2018)によると、日本の中学校教師で週60時間以上働いている人は56.7%で世界一。ちなみに、アメリカは22.2%。韓国は7.8%、フランスは2.6%。

日本だけ突出して時間外労働が多い。

さらに、労働時間に占める授業時間の割合は、イギリスで6割、韓国が7割、アメリカが8割、南米諸国では9割。

そして日本は46.2%。つまり、わが国の中学校教員は、”本務である授業”以外の仕事で忙しい。という痛い状況が明るみに出たわけです。

この調査結果は、ニュースやネットで大きく取り上げられ、教員の働き方改革やICTの導入による学校の効率化、そしてICT教育の推進の加速材料となりました。

確かに、働き方改革の声を上げることやICT教育を推進することは最低限必要な事柄。それはOECDの調査・分析とは関係なく、我々自身の問題として、世界に追いつくために必要に迫られていること。でも、それをレバレッジにしても親や教師への敬意を取り戻すことはできないし、教員の労働環境をトータルで改善することも望めない。

日本の教師って、サックス奏者として劇場の舞台に上げられていながら、左足でスネアを叩き、合間にピアノを弾いているようなもの。それは、見事な大道芸だけど、明らかな場違い。場違いな上に、ある時はサックス奏者として評価され、また別の時にはピアノ奏者として評価されたりする。そんな日本の教師の姿に、異様さを感じなかった私たち日本人全体の感性や価値観が、そもそもの問題。個別具体的な対症療法では、この価値観は変えにくい。


いったい私たちは、どうして、他人に敬意を払う能力や、他人の意図を推し量る能力が弱くなってしまったのか。

どうして、自己中心的な言動で他人を傷つけ、人様の問題に首を突っ込んで誹謗中傷し、愉悦すら感じるように堕ちてしまったのか。

どうして、自己の役割や責任の範囲を自覚する能力が弱くなって、やたらと他人のせいにするようになってしまったのか。


そんな憂と反省の中で、せめてこの地域、この学校だけは、フロントとリズムが阿吽の呼吸で出入する音を奏でたい。そのために磨きあいたいと思う、梅雨の頃です。

頓原中学校校長久村真司
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